注文住宅でもない、分譲住宅でもない

もう一つの新しい選択

30年後、家はまたリノベーションされる。

先日、雑誌を読んでいて、こんな言葉が目に入りました。

「フィジカルAIで住宅を再定義」 AIを搭載したロボットが家の中を動き、人に代わってさまざまな家事をする。 そんな未来の住宅を研究しているという記事です。

すごい時代になったなと思います。 でも考えてみれば、僕らが今、当たり前に暮らしている家だって、昔の人から見れば十分すぎるくらい未来の家なんですよね。

昔の人から見れば、今の暮らしだって魔法みたいなもの

昔は、お風呂に入るにも井戸から水を汲んで、薪を焚いてお湯を沸かしていた。 料理だってそうです。 火を起こして、ご飯を炊いて、煮炊きをする。

それが今では、蛇口をひねればお湯が出る。 ボタンを押せばお風呂が沸く。 冷凍した料理を電子レンジに入れれば、数分後には温かい料理ができている。 「レンジでチン」なんて、昔の人から見れば、ほとんど魔法だと思います。

でも僕らは、そんな暮らしを特別なこととも思わず毎日暮らしています。 だったら、この先の20年、30年だって相当変わるんでしょう。 今回の記事にあったフィジカルAIも、そのひとつ。 AIが画面の中だけではなく、ロボットという身体を持って現実の世界で動く。 掃除をしたり、洗濯物を運んだり、料理を手伝ったり。

もしかすると高齢になった僕らの生活を支えてくれる存在になるのかもしれません。 10年後ではまだ難しいのかもしれない。 でも、20年後、30年後はどうでしょう。 今から家を買う20代、30代の人たちが、50代、60代になる頃です。 僕は、きっと今とはずいぶん違う暮らしになっていると思います。 そして、暮らしが変われば、家も変わります。

30年後、今の新築も「古い家」になる

僕らは今、築30年、40年の中古住宅を買って、リノベーションしています。 昔の家は断熱性能が低いから、断熱材を入れたり、窓を変えたりします。 耐震性が心配なら、調査をして必要な補強をしています。 昔ながらの細かく区切られた間取りなら、壁を取ってLDKを広くしたり、 小さなお風呂や洗面所も、今の暮らしに合わせてつくり直します。

つまり僕らがやっているのは、 昔の暮らしに合わせてつくられた家を、今の暮らしに合わせて更新することです。 きっと30年後も、同じことをやっています。 その頃には、 「ロボットが動きにくいから、この段差をなくそう」 「ここにロボットの待機場所が必要だ」 「家事を自動化するなら、この間取りの方がいい」 そんなリノベーションをしているかもしれません。いや、きっとしてます。お掃除ロボ用の設計ってすでに普通ですものね。


今の僕らが「断熱性能向上リフォーム」と言っているように、30年後には当たり前のように「AI対応リフォーム」なんて言葉が使われているのかもしれません。 そして、これは新築だって同じだということ。 2026年に建てた最新の家も、2056年には築30年。 その頃には、今では想像もできない設備や技術が当たり前になっているでしょう。


どれだけ今、最新の家を建てても、いつか必ず古くなる。 性能がいいとか悪いとか、そんな話ではありません。 30年後の最新を、今つくることはできない。 当たり前です。 そう考えると、家ってそもそも、建てたときに完成するものじゃないのだと思うのです。

だったら、何を基準に家を選ぶんだろう

もうひとつ、最近感じていることがあります。 新築住宅を取り巻く環境も、ずいぶん変わってきました。 建築費は上がり続けています。 大手住宅メーカーですら、注文住宅を全国で広く販売するのではなく、事業エリアを絞ったり、高価格帯へ軸足を移したりする動きが出ています。

新築住宅がなくなるとは思いません。 でも、誰もが当たり前のように新しい家を建てる時代ではなくなっていくのだろうと想像しています(欧米では当たり前ですし)。 これからの新築は、 「新しい家が欲しいから建てる」 というより、 「どうしても、こんな家をつくりたい」 という思いに応えるものになっていくのかなって。

だったら、それ以外の一般の人はどうするのか。 僕は、今ある住宅を、その時代の暮らしに合わせて使っていくことが、もっと普通になっていくと思っています。 築30年の家なら、今の暮らしに合わせてリノベーションする。 そして、そこからまた30年経ったら、その時代の暮らしに合わせて、もう一度手を入れる。

そう考えると、 「新築か、中古か」 という選び方だけではなく、 「この家は、これからも変わり続けられる家なのか」 そんな見方があってもいいのではないでしょうか。

30年後にも、もう一度手を入れたくなる家

キッチンは変えられます。 お風呂も変えられる。 窓も変えられる。 断熱性能だって上げられるし、耐震性能だって、建物をきちんと調べたうえで必要な補強をすることができます。 間取りだって、構造的に可能ならかなり変えられます。

でも、簡単には変えられないものもあります。 土地の広さ。 家の周りにある緑。 窓の向こうに見える景色。 隣の家との距離。 庭。 光の入り方や、風の通り方。 そして、何十年経っても、もう一度手を入れて使いたいと思える家そのものの骨格。この場所に住み続けたいと思えるロケーション。 僕が中古住宅を見るとき、気になるのはむしろ、こういうところです。

今のキッチンが新しいか。 今のお風呂がきれいか。 それももちろん大切です。でも、それだけで家を判断するのはもったいない。 だって、それらは変えられるから。 僕が見たいのは、 この家は、次の時代にも手を入れて使いたくなる家だろうか。 ということです。 30年後の最新設備なんて、今は誰にもつくれません。 30年後の当たり前の暮らしだって、僕らには分かりません。

だったら、今すべてを完成させようとしなくてもいい。 今の暮らしに合わせて手を入れて、 10年後、20年後、30年後。 暮らしが変わったら、また家も変えればいい。 昔の家を今の僕らがリノベーションしているように、今の新築だって、いつか誰かにリノベーションされるはずです。

だから僕なら、 30年後にも「この家なら、もう一度手を入れたい」と思える家を選びたい。 家は、建てたときが完成ではなく、 暮らしと一緒に、何度でも更新していくもの。 フィジカルAIの記事を読みながら、 そんな未来の家のあり方を想像しました。最後までお読みいただきありがとうございます。

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