注文住宅でもない、分譲住宅でもない

もう一つの新しい選択

家は古いから不安、ではなく。古いから分かることもある。

2026年熊本地震の現地報告を読んで、改めて考えた「家の安全性」

日経アーキテクチュアの2026年熊本地震の緊急現地報告を読んでいます。

被害を受けた建物についての記事なので、当然、建物の壊れ方や構造について目がいくのですが、読みながら改めて考えさせられたのが「家の安全性って、建物だけの話ではないよな」ということです。

地震によって地面そのものが割れ、ずれる。 国土地理院の観測では、今回の地震によって日奈久断層帯の北西側で最大約1.5mの水平方向の変動、最大約60cmの沈降が確認されたそうです。また、産業技術総合研究所の現地調査でも、実際に地表に現れた地震断層が確認されています。 ここまで地面そのものが動いてしまうと、建物をいくら強くしたとしても、それだけですべてに抗うことには限界があります。


もちろん、だから耐震性能なんて意味がない、という話ではありません。 耐震性能はとても大切です。 ただ、家の安全性を考えるとき、それだけを見ていればいいわけではない。 今回の記事を読んで、そんな当たり前のことを改めて考えました。お付き合いいただけると嬉しいです。

「耐震等級はいくつですか?」だけでは分からない

家を検討するとき、耐震等級はいくつですか?という質問をする人は増えたと思います。

住宅を扱う側としても、耐震性能を分かりやすく比較できる指標があることは、とてもいいことだと思っています。 でも、家は建物だけで存在しているわけではありません。 その下には地盤があり、その土地には地形があり、造成地なら、どのように造成されたのかという履歴もあります。 擁壁がある家もあれば、盛土の上に建っている家もある。 崖に近い家もあれば、川の近くに建っている家もあります。

今回の熊本地震の被害を見ると、建物がどれだけ強いかだけではなく、その建物が、どんな場所に建っているのかまで含めて、家の安全性なんだと思います。

新築は「これから」を予測する

新築住宅を建てるときには、地盤調査をします。 必要なら地盤改良をして、構造計算をして、これから何十年と建ち続ける家の安全性を考えます。

もちろん、今の技術でできる限りのことをする。それはとても大切です。 ただ、どれだけ調査をしても、これからその土地で何が起こるのかをすべて知ることはできません。 ある意味、新築住宅はさまざまな調査や計算をもとに、この家はこれから大丈夫だろうを予測してつくるものです。 では、中古住宅はどうでしょう?

中古住宅には「経験値」がある

僕は仕事柄、築20年、30年、40年、ときには50年以上経った中古住宅を見ることがあります。

古い家です。 当然、傷んでいるところもあります。 基礎にひび割れがあることもあれば、床下に入れば補修が必要なところが見つかることもあります。 なので、中古住宅は、きちんと調べて買う必要があります。

でも、中古住宅を見るたびに思うことがあります。 築40年の家なら、その家は40年間、その場所に建ち続けてきたということです。 その間には、大雨もあったでしょう。 台風も来たでしょう。 広島は大きな地震が比較的少ない地域とはいえ、小さな揺れまで含めれば、地震だって何度も経験しているはずです。 夏の暑さも、冬の寒さも、地面の乾燥も湿潤も経験しているし、今なお継続しています。

それでも現在、家が大きく傾いていない。 基礎に重大な異常がない。 地盤沈下を疑うような症状もない。 擁壁にも大きな変状がない。 それは、その家について知ることのできる一つの大切な情報だと思うのです。

「何も起きていない」ことも、情報になる

もちろん、「40年間建っているから、この先も絶対に安全です。」なんてことは言えません。 これから大きな地震が来るかもしれないし、豪雨災害に遭うかもしれない。 築年数が経っていれば、構造そのものの耐震性が現在の住宅より低いこともあります。

だから僕たちは中古住宅を見るとき、基礎を見たり、床下に入ったり、小屋裏を確認したり、建物の傾きを測ったりします。 建物だけではありません。 土地の高低差や擁壁、周辺の地形、ハザードマップなども確認します。

そのうえで、大きな異常が見つからなかったとしたら。 僕は「何もなかった」で終わらせるのではなく、 何十年という時間を経ても、大きな異常が起きていない。 ということも、一つの情報として見ていいと思っています。 新築住宅では、まだ確認することのできない情報だとも言えます。

古いから不安。古いから安心。どちらでもない

中古住宅というと、「古いから怖い」「地震が来たら大丈夫なの?」と聞かれることがあります。 その不安は当然だと思います。

でも僕は、 「古いから安心ですよ」 と言いたいわけでもありません。 古いからこそ、ちゃんと調べる。 そして、古いからこそ分かることもある。 それが中古住宅だと思っています。

新築住宅には、最新の基準や技術によって安全性を高められる良さがあります。 一方で中古住宅には、実際にその土地に建ち、何十年という時間を過ごしてきた履歴があります。 言ってみれば、その家と土地が持っている「経験値」です。 その経験値を、傷や古さだけで「ボロい」と片付けてしまうのは、少しもったいないと思います。

家の安全性は、建物の数字だけでは決まらない

2026年熊本地震の現地報告を読みながら、改めて感じました。 どれだけ建物の耐震性能を高めても、地面そのものが大きく動くような自然現象を、住宅だけですべて受け止めることには限界があります。

だからこそ、耐震等級はいくつなのか。 だけではなく、 どんな地盤なのか。 どんな地形なのか。 どのようにつくられた土地なのか。

そして中古住宅なら、 その場所でこれまで、どんな時間を過ごしてきた家なのか。 そこまで見て、家の安全性を考えたい。

中古住宅は、新築住宅より当然に古い家です。 でも、 古いから不安なのではなく、古いから分かることもある。 何十年もそこに建ち続けてきた家が持っている経験値をきちんと読み取ること。 それも、中古住宅を選ぶときの大切な判断材料だと思っています。最後までお読みいただきありがとうございます。

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