注文住宅でもない、分譲住宅でもない

もう一つの新しい選択

街と住まいの価値を守る『敷地制限』という選択

市内で家を探したり街を歩いたりしていて、ふと違和感を覚えることはありませんか?

「ちょっと状態の良い中古住宅や立地の良い土地は、高すぎて手が届かない」 「その一方で、土地が細かく分筆され、ぎりぎりに建てられた狭小住宅が急増している」 利便性の高いエリアの地価が高いのは当然かもしれません。しかし、価格を抑えて「買える総額」にするために土地を極端に細分化する手法が当たり前になると、街全体のゆとりや居住の質はどんどん失われていきます。

「コンパクトシティ」や「豊かな暮らし」が叫ばれる陰で、将来リノベーションも困難な使い捨てに近い住宅ストックが増え続けている現状には、強い危機感を覚えます。そんな思考から以下に続きます。

「小さく分割できる」から地価が押し上げられる構造

「土地を小さく分割して売れば、安くなって買いやすくなる」——一見すると親切な市場原理に見えますが、実はここには大きな落とし穴があります。 「細分化して売ってもいい」というルールがあるからこそ、不動産屋さんは高値で土地を仕込むことができるのです。

本来なら、需要と供給のバランスによって「住宅地としての適正価格」まで下がるはずの土地単価が、「20坪に3分割すれば総額が下がるから売り切れる」という抜け道のような感じです。だから、地価が高止まりしているとも言えます。 もし最初から「このエリアは100㎡(約30坪)以下に分割してはならない」という法的な枠組み(最低敷地面積の制限)があればどうでしょうか?

事業者は30坪の1戸建てとして買える総額から逆算して土地を仕入れるしかなくなるため、土地の仕入れ提示額(=地価)が抑えられます。つまり、安易な細分化を許すことこそが、地価の高止まりを助長しているということです。(不動産屋さんに情報が先に行くのが止まるかもしれません。)

とある自治体が証明した「街の価値を守るルール」

東京都世田谷区などでは、過去の急増したミニ開発による環境悪化を防ぐため、低層住宅地を中心に「最低敷地面積100㎡」というルールを導入しました。導入当初は色々とあったようですが、その後20年以上が経過したいま、明確に成果として表れています。

・地価の適正化: 「分割できない=1戸として売るしかない」ルールが定着したことで、事業者の無理な仕入れ競争がなくなり、土地の価格が『居住用としての適正水準』へと収斂しました。

・中古市場での高い資産価値: 100㎡以上のゆとりある敷地に建てられた家は、将来間取りを変えたり、駐車スペースを増やしたりと「時代の変化に合わせてリノベーションできる可変性」を持ちます。


だからこそ、築年数が経っても中古市場で高く評価され続けています。(反論もあるでしょうが) 目先の販売総額を小さくして売り切るビジネスではなく、「ゆとりある区画で長期的な資産価値を守る」市場へ変化しました。

広島の郊外住宅地にこそ、いま「広さのルール」が必要だ

広島市においてこうした最低敷地制限が機能しているのは、西風新都などの一部の新興開発地に限られています。廿日市市に関しては(旧大野町)、この機能は元々あったのですが、現在はなくなっています。(確か)ほとんどの市街地では制限がなく、細分化は市場の自由。そんなわけで、新築が建つ土地のかなりの部分が狭小化された土地です。

念のためですが、僕が特にこのルールを活用すべきだと考えるのは、世代交代の局面を迎えている「広島市郊外の既存の大型住宅団地」です。 郊外のゆとりある敷地が細分化され、狭小住宅が立ち並んでしまえば、もともとあった閑静で豊かな街並みは崩壊します。将来的に間取りの変更も、車を止めるスペースの確保も難しい家が増えれば、数十年後に再利用できず「空き家」として取り残されるリスクが高まるはずです。

新築だから売れるのであって外壁の補修もままならないような家が売れるとは思えません。(本音) 郊外の最大の強みは「土地のゆとり」であり、「豊かな暮らしの余白」です。

広島市による都市計画の規制はもちろん、住民主体の「建築協定」などを通じて「敷地の細分化を許さないルール」を設けることこそが、郊外のブランド価値を守り、次の世代に良質な住環境を引き継ぐ鍵になるはずです。

最後に:これから選ばれる「本当の豊かさ」とは

これから日本は本格的な人口減少社会を迎え、同時にテクノロジーの進化によって働き方や暮らし方の自由度は劇的に向上していきます。

効率や利便性ばかりを追い求め、土地をギリギリまで細分化して売り切るような住宅づくりは、過去の人口増加時代の遺物になってもおかしくありません。モノや機能が満たされ、AIや技術が身の回りを支える時代になればなるほど、僕たちが最終的に求めるのは「住まいとしての本当の豊かさ」だと思うのです。

その時、人々に選ばれ、時代を超えて残っていく不動産とはどんなものでしょうか。

僕たちは、それこそが「空間的なゆとり」を含んだ住まいだと信じています。

光や風の通り道があり、素材の質感を愉しむことができ、家族や自分の時間に深く向き合える空間の余白。安易な細分化に走らず、適切な広さとルールで担保された住環境こそが、これからの時代における本当の資産であり、僕たちの暮らしを真に豊かにしてくれるはずです。狭小住宅に疑問を抱く皆様の思考の整理になれば幸いです。

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